という、アニメ映画みたいなタイトルですが^^;
ルイス・ペーニャ。今年も日本に来てくれました。
ルイスはfestero(フェステーロ)です。カンタオールでも、バイラオールでもない。ブレリアを歌って、踊ります。フラメンコのアルテの根源。もしかしたら、プリミティブでいて一番難しい。
今回教えてくれたひと振り(una pincelada)は、もっともっとシンプル。
クラス中に、ルイスがひとりひとりに聞いてきました。
「いま見たブレリアを、一語で表すとしたら何だい?」
20人もいるんだから、すぐに被っちゃうよ!とみんな焦りますが、実際、出るわ出るわ…
直子さんが、書き留めたものを送ってくれました。
sabor(味わい)、momento(モメント/瞬間)、sorpresa(驚き)、macizo(中身の詰まった)、condensación(凝縮)、disfrute(楽しみ、喜び)、guapo(カッコイイ!)、sentir(感じる)、requisito(美味しい)、recoger(掴む/掴めるようになりたい)、aroma(huere a
triana)(アロマ/トリアナの薫り)、intencion(インテンシオン/意志)、elegancia(エレガンシア/優雅さ)、estrella fugaz(流れ星)、es flamenco(まるで何でもない事みたい、
ルイス自身も、これだけ出たことに驚いていました...!!
そのときはとっさに思いつきませんでしたが、そういえば私は常々、ルイスのブレリアは魔法みたいだ、と思っていました。(magia!)なんだか、ビックリ、と、ワクワク、が両方詰まってるんです。
というわけでルイスは魔法使いってことに。
ルイスと初めて会ったのは2012年です。
ちょうどスペイン留学を控えていたとき。俵さん、井山直子さんが毎年ルイスを日本に連れてきてくれるんです。たしかその年は、サラ・アンダルーサでライブがあったんです。
その頃の私はタブラオに出始めで。
ショーの最後にいつもやってくる、ブレリアというものに悩んでいました。フィエスタで踊るブレリアなんて、誰も教えてくれない。自分で学ぶしかない。でも、どうやって?
ルイス・ペーニャを初めて見たときの衝撃ときたら。ぼんやりと霞の向こう側にしか見えなかった、喉から手が出るほど欲しかった宝物を、目の前に出してもらったかのような感覚でした。フラメンコって、こういう物なんだ、と思いました。
たまらず直子さんに話しかけて、すると、セビージャでクラスをやっているとのこと。スペインに来るなら、おいで、と言われ。
行きました。
そこは隠れ家のようなスタジオでした。靴もスカートもいらない、遊び、アルテとしてのブレリアを、ルイスはそこで見せてくれました。
実際ルイスのクラスには来客が多いです。笑
名だたる歌い手、ギタリストがふらっと遊びにやってきたり(そしてわたしたちと一緒になって遊んでくれる)、地元の若者がルイスのアルテを学ぼうと通ってたり。生徒も「踊り手」ではなく「アフィシオナード(愛好家)」。踊りのテクニックは分からないけれど、ブレリアを楽しく踊りたい、味わいたっぷりのオバちゃん、とか。みんなルイスのアルテに惹きつけられるようにやってきては、楽しいひと時を共有して、満足して、帰っていきます。
ルイスのクラスは「授業」というより「vivencia(体験すること、生きること)」でした。
このvivenciaというのが厄介なもので。
ブレリア、本来は教室で教えられるものではないんですね。私たちが普段テレビを見るように、家族や、友達が集まると自然とフラメンコがはじまる。この遊びの中で、みんなリズムなり踊りなりを自然と身につけていく。そしてそれはやはり、年長者から年少者へと受け継がれていく。ルイスはもう何十年もこの遊びに身を置いているそうです。
そんな環境はもちろん日本には存在しません。(それどころか今やスペインにもほぼ存在しませんが)どんなに好きでも、やはり私は外国人で、文化も環境もない。そのことを悲しく思ったりもしますが、フラメンコ人たちに共通するのはこんなどうしようもないフラメンコ好き部外者をも優しく迎え入れてくれることです。「フラメンコの道」を歩くには国も血も関係ない、必要なのはフラメンコへの「愛情」と「尊敬」だけさ。。(かっこいい!!)
こうやって一年間、ルイスのクラスに通いつつ、フィエスタ遊びに潜入することも覚え、わずかながらも貴重な「vivencia」を体験することができました。これは私の、一生の宝物。
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